本記事は生成AIと共同で執筆しています。事実関係は可能な範囲で公式ドキュメント等と照合していますが、誤りが含まれている可能性があります。重要な判断を行う前にご自身でも一次情報をご確認ください。
Ocean Protocol は、データ流通のためのプロトコル(やり取りの約束事を定めた規格と、その実装)です。データそのものを渡さず、データのある場所へ計算を送り込んで結果だけを受け取る Compute-to-Data という仕組みを持ちます。公開できない資料を扱う文化機関にとって関わりのある考え方ですが、調査した限り、日本語で読める資料は概要の紹介が中心で、実装に踏み込んだものは見つけられませんでした。
この本は、公式ドキュメントを日本語で読めるようにしつつ、実際に手を動かして確かめた結果を併記していく記録です。
進め方
公式ドキュメント(oceanprotocol/docs)は 130 ほどのファイルで構成されています。最終的には全体を対象にできる分量ですが、まずは資料の流通に直接関わる部分から順に進めます。
- 資産モデル(Data NFT とデータトークン。それぞれ「資産そのものを表す token」と「利用する権利を表す引換券」に当たります)
- DDO(Decentralized Identifier Document。題名・ライセンス・提供条件などを書いた、資産の説明書)
- サービスと価格の型
- Compute-to-Data
- Ocean Node の役割(チェーン上の記録を監視して検索できる形にし、暗号化や計算の実行も担うサーバ)
- 役割と権限
トークンの運用、Data Farming(トークンを預けて報酬を得る仕組み)、Predictoor(予測データを売買する仕組み)といった領域は、資料の流通とは別の目的を持つ機能です。この本では後回しにしますが、対象外と決めているわけではありません。
なお Ocean Protocol Foundation は 2024 年に Fetch.ai、SingularityNET という 2 つのプロジェクトとともに Artificial Superintelligence Alliance を結成し、それぞれのトークンを FET(Fetch.ai のトークン)へ移行する枠組みが作られました。OCEAN は Ocean Protocol が発行してきたトークンで、この枠組みでは一定の比率で FET に交換されます。2025 年 10 月に同 Foundation は同アライアンスからの離脱を表明しています。トークンに関わる記述を読むときは、参照している資料がどの時点のものかを確認したほうがよさそうです。
(この本の中心である資産モデルや Compute-to-Data は、これらのトークンとは別の仕組みです。OCEAN や FET を持っていなくても、以降の内容は読めます)
翻訳と、実際の記録を併記します
逐語訳ではなく、公式ドキュメントの記述と、実際にチェーンに残った結果を並べて書きます。
ドキュメントを読むだけでは気づけなかった点がいくつかあったためです。調査した限りでは、次のようなことがありました。
- Data NFT の
tokenURIが外部の URL ではなくdata:URI で、JSON がチェーン上に埋め込まれていた。その JSON には資産固有の情報が入っていない - 作られた NFT のコードが 45 バイトだった(ERC-1167 という規格の「プロキシ」——本体は別の場所にあり、そこへ転送するだけの最小限のプログラム——を使っているため)
supportsInterface(その契約がどの規格に対応しているかを問い合わせる関数)が、ERC-165 という規格自身の識別子に対してfalseを返した- メタデータを復号するノードの URL が、平文で記録されていた
いずれも公式ドキュメントには記載を見つけられませんでした。動いているものを読むと、書かれていない部分が見えてくる、という程度の意味です。
突き合わせに使った記録
2026 年 8 月 13 日、国立国会図書館デジタルコレクションが公開している古典籍『歳旦発句牒』(芭蕉編、1682 年刊)の IIIF(International Image Interoperability Framework)マニフェストを、Ocean を基盤とするポータル Clio-X に 1 件登録しました。そのとき Ethereum のテストネット(本番と同じ仕組みを、価値のないテスト用通貨で動かす試験用のネットワーク)Sepolia に記録された取引です。
① 0x2d29cc0626971b6c71bc135e4f68bbe711da1b16f6098664724bf4a7f7f8bc84
③ 0x2b699f1d67904dc675e204702318bf7c4bca9cb53e38ecfaed3252f0cecb9103
公開チェーン上に残っているので、誰でも読めます。この本に出てくる数値は、原則としてこの 2 本から取っています。
読み解くための道具も用意しました。取引ハッシュを入力すると、各アドレスが Ocean の仕組みの中でどの役割を持つかを添えて表示します。
デモ: https://chain-lens-amber.vercel.app
想定読者
- 図書館・博物館・公文書館で、資料を渡さずに利用させる仕組みに関心のある方
- Clio-X や Gaia-X など、データスペースの実装を検討している方
- Ocean を使うことになったが、日本語の資料が見つからず困っている方
暗号資産の知識は前提としません。ブロックチェーン自体の基礎については、姉妹編の『読んで学ぶブロックチェーン』を先に読むと繋がりが良くなります。
ライセンスと出典
公式ドキュメント oceanprotocol/docs は Apache License 2.0 で公開されており、翻訳・改変・再配布が許諾されています。この本はその許諾に基づく派生物です。
原文からの主な変更点は次のとおりです。
- 対象とする範囲を選び、順序を組み替えた
- 実際のチェーン上のデータによる確認結果を追加した
- 日本の文化機関の文脈(IIIF、デジタルアーカイブ)に沿った例を用いた
- 原文に記載を見つけられなかった観察を加えた
原著作権は Ocean Protocol Foundation に帰属します。誤りがあれば、それはこの本の側の責任です。